いっしーの車両性能講座

2015年1月 1日 (木)

いっしーの車両性能講座④

前回まで文章と図や表を用いて説明していた「いっしーの車両性能講座」ですが、なぜか突然動画になったので、紹介いたします。
BVEやその他シミュレーションの車両性能作成者は必見?
是非ご覧ください。

 
新年明けまして鉄道コム
http://www.tetsudo.com/

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2013年7月 3日 (水)

いっしーの車両性能講座③ 「電車の制御タイプ」

001

前回挙げた性能の取材の方法の中で説明が必要そうなものは、電流計の見方や乗り心地、VVVFのモーター音と性能の関係であろう。しかし、電車の制御方法によって計器の見方や性能の作り方が少々変わってくる。そこで今回は、現在の電車の制御のタイプ別分類に触れることにする。

Book3

表のように、電車の運転をシミュレートするという観点では、電車の制御は大きく2つに分類できる。特に電流計を観察したり乗り心地やモーター音を参考にしたりする場合には、経験上この分類がわかりやすい。1点、恥ずかしながら、サイリスタ位相制御で分巻電動機を採用している国内の鉄道車両の事例を知らないため、電動機の欄に表記をしていない。代表車種は、一般的に有名であろうこととゲームで採用したことを踏まえて列挙した。中には廃車が進んでいたり、取材できないこともあるかもしれないが、一応分類として載せておく。もちろん、それぞれの電動機で特性が異なったり、これらの制御それぞれにも細かい分類があることは承知している。様々に異論はあろうが、「これとこれは同じように観察すると作るのが楽そうだ」という意味に思っていただければ幸いである。ちなみに、「抵抗制御系統」や「パワエレ系統」は私の造語である。

まとめると、いわゆる定トルク域といわれる領域で、電動機電圧を連続的に制御しているか否か、という違いになる。定トルク域では、連続的に制御していない(段階的に制御している)「抵抗制御系統」の車は乗り心地が、連続的に制御している「パワエレ系統」の車はモーター音がそれぞれ特徴的なものになっている。このように、どの制御方式なのかによって観察・知覚することが変わってくるので、取材前にしっかり調べておく必要がある。最近では同じ形式でも機器の換装が進んでいる場合があるので(特に界磁チョッパ・界磁添加世代のVVVF化はJRも他の私鉄も事例がある)、特に過渡期は編成ごとに注意が必要だろう。

003

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年4月16日 (火)

いっしーの車両性能講座② 「取材や調査の方法」

GPSで計測した速度

前回は導入として、応答性と機敏性の話をした。今回は、電車の運転シミュレーションを制作する観点から、どういう取材や調査が必要なのか、という点について述べる。その詳細については長くなるので次回以降にしようと思う。

以下に、私自身が京成の制作の際に用いた、電車の加速力を知るための様々な方法を挙げる。例として加速状態を捉える方法としているが、減速側も動揺である(後述)。

・営業列車の加速時の速度計の動きを映像で記録し、単位時間ごとの速度をプロットして変化量(=加速度)を得る。
・加速度計(単位時間ごとにPCに記録できるキット)を用いて、営業列車の加速度を直接計測する。
・営業列車の加速時の電流計の動きを映像で記録し、分析する。
・VVVFや電機子チョッパのモーター音や、抵抗制御の乗り心地を参考にする。
・資料(ノッチ曲線)を用いて加速度を算出する。
・シミュレーターで運転してみて実際の車両と比較する。

Table2

表には、これらの手法の長所と短所をまとめた。全てを試した結果、唯一、加速度計による計測だけは誤差が非常に大きく、制作には向かないという結論に至った(用いた加速度計がかなり安価な民生品だったことも影響している)。その他の方法は、どれが一番良いということはなく、臨機応変に全てを組み合わせることで互いの欠点を補うことが望ましいといえる。

Notch

ノッチ曲線は、各ノッチごとの速度による電流の変化と、引張力を記してある資料である(図は電流のみを記した模擬ノッチ曲線)。この資料が閲覧できた場合は、これを基軸としつつ営業列車の電流計指針値の変化と乗り心地やVVVFのモーター音などを参考にしてデータを作成し、最後にシミュレーター上で運転してみて確認するという手順を踏んだ。資料が存在しなかった海外の鉄道では、私自身が現地に行けなかったのと、加速度の資料がごくごく簡単なもの(各ノッチの最高速度が書いてある程度)しかなかったので、営業列車の速度計の変化などを参考にしつつシミュレートの精度を東急並に落として対応した(計器類がないので大きな問題にはならなかった)ことを記憶している。

通常、駅から出発する際はフルノッチで加速することがほとんどであるが、稀に制限や信号等でP2またはP3などのノッチ位置で加速していくことがある。こういった場合に、どの場所でどれくらいの速度になるかを記録しておけば、フルノッチ以外でも加速度が確認できる。

ここまで加速の話をしてきたが、減速側は少々厄介である。相当に運転の長けた運転士が必要に駆られるということでもない限り、常用最大ブレーキを連続してかけ続けて停車することがないからである。速度計や電流計やモーター音の分析がしにくい。ノッチ曲線があっても、電制については判明するが、空制と合わせた減速度は判らない。こればかりは、シミュレーターで運転してみて実際と比較することを重点的にせざるを得ない。その場合の指標は、ホーム端進入速度とステップ(ブレーキ段)やジャークの状態、ブレーキを調節している位置、その時の圧力計や電流計の指針値、電制が切れたあと(空制のみ)の減速度、などである。

ノッチ曲線図

実際のノッチ曲線図(103系)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2013年3月30日 (土)

いっしーの車両性能講座① 「応答性と機敏性」

Img_2453

かねがね、このブログで性能挙動関連の話を書こうと思っていたのだが、形として見えにくい分野で、上手く説明できる切り口を探しているうちに書く機会を逸してしまっていた。最近になって、TwitterでBVEの性能挙動に関連した発言をしたところ、思いの外、反響が大きかったので、電車の運転をシミュレートするという私の専門だった分野に立ち返って、制御や性能の話をまとめようと思い立った。ちなみに、他の筆者共と違って、常体での表現(しかも周りくどい)になるが、ご容赦いただきたい。

そもそも、一般的にシミュレーションとは、完全な再現をするもの(エミュレーション)ではない。電車の運転シミュレーションに関して言えば、例えば湿度や外気温によってモーターの排熱が変わって内部抵抗や効率が変わって性能が変わるとか、乗っている人の配置によって重量バランスが変わるから車輪ごとに粘着力が変わるとか、そういった細かい要素は必要ない(もちろん、開発分野には必要とは思う)。そういった、ある程度のデフォルメが必要で、それをどこまでやれば良い精度が得られる(誰も文句を言わなくなる)か、というのが大きな課題となる。

そんな大それた前提はさておき、これから何回かに分けて話を進めていくことになるが、初回の今回は、比較的軽めな話題にしようと思う。乗っていてもわかりやすい応答性と機敏性の話だ。

応答性と機敏性というとどちらの単語も同じように聞こえるかもしれない。だが、私の中では明確に使い分けている。応答性は「運転士がハンドルを操作してから装置が起動するまでの時間」によって現れ、機敏性は「その装置が起動してから適切な状態になるまでの速さ」として現れるものと考えている。例えば、運転士が、停車中にブレーキハンドル位置をニュートラルから常用最大に変えた時、ハンドルを動かしてから空気圧が充填され始めるまでの時間が応答性にあたり、空気圧が充填され始めてから常用最大の圧力値になるまでの速さが機敏性にあたる。カタカナで言うと、レスポンスとスピードの違いだ。

Table1

さて、ここで表をご覧いただきたい。これは、T急で制作されたデータの一部を模擬した(実際の数値とは変えてある)ものである。シミュレータの精度としてはこれでも不完全な仕様だが、判りやすいデータとして示すには適していたので紹介する。上の反応時間というのが私のいう応答性、下のジャークというのが機敏性にあたる。ちなみに、この数値は、かなり反応の良い車の部類になる。機敏性も高い。

見て判るように、応答性は時間、機敏性は加速度の変化率で記してある。ちなみにブレーキ緩解(Bx→N)は抜きブレーキ、ノッチオフ(Px→N)は戻しノッチで代用していたはずだ。

データ制作の際に鉄道会社から資料を貰えることがあったが、実は、これらの数値は、そこには含まれない、というよりそんな資料はない。(資料は、主にダイヤ作成に使用するために作成されることが多く、これらの数値は誤差と見なされるためと私は考えている)

したがって、数値の求め方はかなり泥くさくなる。まず、電車を運転している動画(最低でも運転台のハンドル位置と圧力計と速度計と電流計のみが映っていれば良い)を複数の営業列車で撮影して、可能であればモーター音と同期させ、その車両の状態を確認しながら作っていくことになる。最後は運転士にシミュレーターで運転してもらって微調整となるが、この2つに関しては、運転士によっても違う意見が出ることがある上に、編成ごとの個体差もあるので(場合によっては検査前後の違いもある)、それをどこまで反映させるかは、結局のところ制作者の味付けになる。私の場合(京成の車両)は、映像を参考にしつつ、車両ごとのキャラクター性を重視して、少し強調した記憶がある。このやり方は、BVEの車両データ作成にも使えるので、参考にされたい。

さて、ここまで書いてきたが、この仕様は運転シミュレーターとしても完全ではないと書いた。特に機敏性に言えるが、抵抗制御車の再力行時のカム軸回転による加速の遅れを再現できないことが挙げられる。速度によって応答性を変える数式を作って組み込むことでも再現できそうだが、抵抗制御の進段と戻しノッチ・刻みノッチをシミュレートできなかったことと合わせ、性能挙動のモデルチェンジをすることになり、京成モデルの開発に至るのである。

最後に、応答性は、初期のVVVF車(初期のGTO)が一番良くないということに触れておきたい。かえって、抵抗制御系統(界磁チョッパなども含む)の車のほうが良いようである。これは、惰行中の再力行時に嫌儲で、初期のVVVF車は、速度センサによってモーターの回転数を計測してからトルクを制御する必要があるのに対し、抵抗制御は機械的に接続されて動作するためと理解している。一方の機敏性は、先述のとおり、抵抗制御系の車はカム軸が回る時間がかかるが、一部の界磁チョッパの車では0A(ゼロアンペア)制御によって機敏性を高めている京急1500などの事例もある。後期のVVVF車はベクトル制御によって応答性を高めているが、東急5000系列のように(おそらく乗り心地や転倒事故防止のため)機敏性を低く抑えている事例がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)